スピーカーに興味を持ち、勉強と試作、実験を繰り返して1年ほど経ちました。
作りまくっていく中で、自作スピーカーに関してわかった事が沢山ありますので、今回は私なりに得た「スピーカー自作で大切な考え方」をまとめました。
ざっくりいうと以下の3点です。
・ある程度ゴールを見た状態で作り始めたほうが良い
・プラシーボ効果も自作スピーカーの楽しみの1つ
・工作自体を楽しめるかどうか
これからスピーカーを自作してみたい方の参考になれば幸いです。
自作スピーカーは、ゴールが見た状態で作り始めたほうが良い
1点目は、ゴールが見えたほうが良いという事です。
ゴールとは、自分はどんな音楽をどこで聴くために、どんな音が欲しいのか?という事です。これがハッキリしているかどうかで形状や予算が変わってきます。
つまり5W1Hというやつですね。
「When:いつ」「Where:どこで」「Who:だれが」「What:何を」「Why:なぜ」「How:どのように」
そのスピーカーから聞くために自作したいのか決める、ある程度最初にゴールを見た上で作り始めたほうが良いです。
例えば、「一軒家の専用リスニングルームで、ジャズやクラシックなどを午後のひと時に一人でじっくり楽しみたい人が欲しい音」と、「アパートのリビングでMP3にしたJ-POPを気軽に手軽に聞きたい人」では、同じように「いい音」が欲しかったとしても、それぞれ求める音が違うはずです。
スピーカーボックスの設置環境だけでいっても、前者であれば、スピーカーユニットおよび、エンクロージャーは比較的大きめで完全に据え置きでスピーカーの設置位置やリスニング環境を考慮する必要がでてくるでしょう。
逆に後者の場合は、カラーボックスの上におけるぐらいのサイズ感で十分でしょう。部屋の模様替えに合わせて置く場所を変えたりできるので場所の自由度も高いです。
自分の求める音ははどんなものなのかゴールが見えた状態で作り始めたほうが、予算も時間も節約できるかと思います。
いい音とは何か スピーカーから出る音は
「絶対的なもの」と「相対的なもの」がある
ゴールを決める前に、私なりに「いい音とはなんなのか?」について解説します。
いい音には誰が聞いてもわかる「絶対的なもの」と個人の感じ方による「相対的なもの」があります。
「絶対的なもの」で一番分かりやすいのが「音割れ」です。誰が聞いても音割れは不快に感じるはずです。音割れが良いか悪いかでいったら誰が聞いても悪いと答えますよね。すなわち音割れがするスピーカーは悪い音のスピーカーといえます。
もう一方の「相対的なもの」は個人の感じ方です。たとえば、「ふくよかな」「まろやかな」「突き刺すような」「包み込むような」「やさしい」「複雑な」「高級感のある」といった表現で表されます。これは聞いた人が他の何かと比べて感じたものになります。
まず、いい音という表現には「絶対的なもの」「相対的なもの」の2種類がある事を理解しておくとよいかと思います。
そして、オーディオの世界の表現の多くが「相対的なもの」であふれているのです。だからよくわからなくてモヤっとするんですね。
オーディオマニアやピュアオーディオ、俗にいう「スピーカーから出る音がきちんと理解できる方々」が今まで聴いてきた経験と知識から比較して表現されたものだということを念頭においておくと良いかと思います。
自作スピーカーの世界はグルメや
チューニングカーの世界と似ている
スピーカーを自作して、色々な動画を作ってきて感じる事たことですが、自作スピーカーの世界はチューニングカーの世界に似ていると感じました。自作スピーカーで有名な長岡鉄男さんはグルメの世界に似ていると書籍に書いていました。
ユニット、アンプ、プレイヤー、コードはもちろん、エンクロージャーに至っては、サイズ、形状、樹種や素材、設置場所、リスニング環境など様々なものが自由自在にカスタム可能です。
たとえば、リスニング環境を「車体」とすると、音を出すためのものは「エンジン」とします。
早い車が欲しければ、GT-Rやポルシェターボなど、元々から速いチューニング向きの車を改造していくほうが結果的に速くなります。
軽自動車では、いくらチューニングしても湾岸線などの高速域ではGT-Rには勝てません。
素晴らしいリスニング環境という土台があって初めて、凄い音響システムが活きて来るのではないかと思います。ピュアオーディオと言われるオーディオマニアの方が目指す世界ですね。
逆に、そんなに凄い車体でなく、軽自動車でもそこそこ速い車は作れます。アルトワークスなんか狭くて細い下りのワインディングロードであればかなり速いのではないでしょうか。
ある意味、私の目指している所はこのあたりにあります。予算も軽めに手軽に自分好みの良い音を作るという所ですね。
それでは満足できない人が、更に深みにはまっていくのです。シルビアや180SX、AE86などからGT-Rに乗り換えていくようなもの。
オーディオの世界も似たような底なし沼だと感じました。
最終的には、音楽を聴くためだけの部屋をつくり、さらにいい音質を手に入れる為に安定した電気を自宅に引き入れる「マイ電柱」というところまでいくのがある意味ゴールなのでしょうか。
ちなみに私はスズキのカプチーノという軽自動車に乗っていますが、今まで所持してきた車の中で一番楽しい車だと思ってます。
ゴールを決めるとは、すなわち
「どこで妥協するか」を決める事
こういう書き方をすると、ネガティブなほうに取られがちですが、極論をいえば自作スピーカーのゴールは「妥協点を見つける事」だというのが私のたどり着いた結論です。
つまり「どこは妥協できて」「どこは妥協できないのか」です。
結局はスピーカーもアンプも消耗品です。最終的にいつかは壊れます。そこにどれだけの予算と時間をかけるのかを決めるのです。
オーディオの世界は「全て掛け算」と言われています。昔はレコードの針から音は決まると言われていたとコイズミ無線の店員さんから教えてもらいました。
ユニットを良い物にすれば、ケーブルも1ランク上げたくなる、低音が物足りないからウーファーを追加してみる、高音が欲しいからツィーターを追加する、それに合わせたエンクロージャーも、アンプも良いものに、、、
果てしない、キリの無い世界です。※掛け算なので箱が無い0だと途端に音はシャリシャリ言うだけの0点に近くなります。
しかしながら、多くの人は予算も、時間も置く場所も有限です。
もしかすると予算は無限の人もいるかもしれませんが、そういった人は自作ではなくハイエンドの物を有名オーディオメーカーで買いそろえる。あるいは、完全オーダーメイドでプロに全て依頼したほうが結果的に幸せになれそうです。
妥協できない点を探す、例えば、ドンシャリ系が好きなのであればウーファーとツィーターは必須だけど、高解像度な音質は求めていないからアンプは比較的安価な物にする。等ですね。
「どこは妥協できて、どこは妥協できないのか」を決めておくと、自作する上での方向性が決まりますよ。
「いい・悪い」と「好き・嫌い」は違う
先ほど、長岡鉄男さんがオーディオの世界はグルメに似ていると書籍に書かれていると書きましたが、これはすなわち「いい・悪い」と「好き・嫌い」は違うという事です。
納豆が好きな人もいれば、嫌いな人もいます。
パクチーが好きな人もいれば、嫌いな人もいます。
オーディオも同じように
ドンシャリ系が好きな人もいれば、嫌いな人もいます。
唸るような低音が好きな人もいれば、嫌いな人もいます。
いい、悪い は 絶対的なものと相対的なものがあると書きました。
この相対的なものの中に「好き・嫌い」があるのです。それは「いい・悪い」とは違います。
原音に近い音を再生することが一般的にはいいスピーカーと言われます。
そんなキメの細かい音を「好き」とする人がいる一方で、低音ドンドン、高音シャリシャリ言わすのが「好き」な人もいます。
「いい・悪い」と「好き・嫌い」は違うのです。つまり人の感じた「いい、好き」が自分にとっても良いかどうかは違う可能性があります。
ちなみに私は、クラシックやジャズをしっぽり楽しむより、打ち込み系やPOPSをドンシャリいわすのが好きなタイプです。
プラシーボ効果もスピーカー自作の楽しみの1つと割り切れるか
プラシーボ効果を楽しめるかが2つ目のポイントです。
ザックリ説明すると「いい音の○○に変えたのだからいい音が鳴っているはずだ!」という思い込みですね。たとえば吸音材を入れたから雑味が減って良い音になっているはず!とかそんな感じのことです。
上の写真は、太くて高いケーブル、ホムセンの細い赤黒ケーブルを比較実験したときのもので、なんとなく太くて高い方が良い音がしたような気がしました。
プラシーボ効果を詳しく説明すると以下のようになります。
有効成分が含まれていない薬を投与され、機序がないにも関わらず、
患者は薬が効くと思い込んでいることにより、病状に改善・回復の兆しが見られること。
つまり、思い込みの効果です。
「プラシーボ効果も楽しみの一つですよ!」初めてコイズミ無線の店員さんにオーディオについて教えてもらったときに言われた言葉です。
この時に、先述した「相対的なもの」のいい音の表現が活きてきます。
「音について完全に理解している人間が言う事なら間違いないだろう!この○○に変えれば音の特性は良くなるはず!」という感じです。
このプラシーボ効果もスピーカー自作の楽しみの一つと割り切れるかどうかが自作スピーカーのポイントの2つ目です。
逆に、実際に聴いてみると思ったような効果が実感できなかったりすることもあるのですが……
工作自体を楽しめるかどうか
最後は、3つ目は工作自体を楽しめるかどうかです。
たとえば、安く欲しいという理由だけで自作する事を選んだけれど、実は作るのが苦痛というのであれば、お金を出して有名メーカーのスピーカーユニットを買ってしまったほうが時間的にも精神的にもメリットが大きいと私個人は思います。けっこう手間も時間もかかりますからね。
クリプトンオンラインストアさんなら、多種多様な良さそうな音のスピーカーが手に入るので手っ取り早くてオススメです。
逆に、工作がちょっとでも好きであれば、自作するメリットはかなり大きいです。
手の届く予算内で、今の環境に合わせたものを手に入れることができますからね。
工作自体を楽しめる。それだけで自作する価値はあるかと思います!
工作を楽しめれば100均のスピーカーでも楽しめる!
今まで何台か、100円ショップのスピーカーで自作のユニットを組んできましたが、これがまた楽しいんです。
箱のサイズや素材、形状を変えるだけなのに、100均のユニットが心地よくなってくれるようになるんです。もちろん、高い口径の大きいユニットの方が良い感じの音は鳴るのですが、これはコレでなかなか趣深い音がでます。
「良い音を手に入れる」という最終目標があって、1組だけ作りたい人にはオススメできませんが、工作が好きであれば1回試してみて欲しいです。
プラスドライバーで分解して、少し大きめの箱に入れるだけで音が激変するので、スピーカー工作の醍醐味を手軽に味わえますよ!
YouTubeのコメント欄でアンモナイトスエンクロージャーで100均のユニットを鳴らす動画を教えて頂いたのですが、とても100均のユニットとは思えないようなウッドベースの低音が出ていました。
たとえ100円ショップのスピーカーでも、これだけの可能性があるんだと驚き、さらにいろいろと試してみたくなりました。
自分で手を動かすと、本質が分かってくる
自分で作っていくと、本質が分かってきます。
例えば、ケーブルによる音の変化や、吸音材の入れる位置や量による音の変化など、自分でやってみてわかることがいっぱいあります。
その知識と経験が、次の自作スピーカーに活きるのです。
自作の良い所は、工夫のしようが無限にあるところでしょう。
次はこうしたらどうなるんだろうか?とやっているうちに色々な本質が分かってくるところに自作スピーカーの価値があると私は思います。
聴けばわかる、聴かなければわからない
スピーカーユニットのスペックや、実際に録音した周波数の波形をみるだけで、「音の良い悪い」が分かる人もいるかと思いますが、私のような普通の人にはいいのか悪いのか、まず分からないと思います。
上の写真のような目で見えるデータだけを見せられても、実際のところよくわからないという事です。
自分で買って、作って聴けばある程度わかります。逆に聴かなければ何も分かりません。
スペック見ただけで音が分かる人は本当に凄いです。絶対に失敗しないのでしょうね。
自作スピーカーに関する持論まとめ
スピーカーに興味を持ち、勉強と試作、実験を繰り返して1年。たくさんのスピーカーを作って実験してきました。
そのなかで思ったことは以下の3点でした。
・ある程度ゴールを見た状態で作り始めたほうが良い
・プラシーボ効果も自作スピーカーの楽しみの1つ
・工作自体を楽しめるかどうか
これからスピーカーを自作してみたい方の参考になれば幸いです。
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