自作スピーカーを作るにあたって、押さえておくべき基礎知識を私の経験と勉強をもとにわかりやすく簡単にまとめました。
これから「よし!スピーカーを作るぞ!!」とお考えであれば、作成前にこの記事に目を通しておくだけでもワンランク上の音を安価に手に入れるきっかけになるかもしれませんよ。
今回まとめたのはスピーカーづくりにおける音のづくりの概念、スピーカーの箱について、スピーカーユニットについて、アンプについてという自作の基礎知識として押さえておきたい項目となります。
まずは基礎知識からです!
スピーカーづくりの基礎知識
まずはスピーカーづくりの基礎知識からです。
自作スピーカーは簡単に言うと、スピーカーユニットを用意して、適当な箱や板に入れて、アンプつなげて、音源につなげれば完成です。とっても単純ですね。
とはいえ、何の考えもなく自作してもいい音のスピーカーをつくることができるとは限りません。
まずは自作の基礎知識を押さえておきましょう。
自作するのは箱=エンクロージャー
このサイトでいうところの「自作」とは基本的にスピーカーの箱(エンクロージャーといいます)の作成、スピーカーユニットの取り付け、アンプの接続のことを言います。
なかには、スピーカーユニットやアンプを自作される方もおられますが、すでに高音質なものが市販されているのでそれを使わせてもらうのが一番現実的で安価です。ユニットやアンプの作成は私を含め素人では無理でしょうしね。
「それじゃ、自作ではないのでは?」と言われるかもしれませんが、箱(エンクロージャー)とスピーカーユニット選び、アンプ選び、接続方法などで音は心地よく変化させることができるのです。
一般的にもスピーカーの自作というと、基本的には箱の自作のことを指すようです。
音の良さは掛け算で決まる
音の良さは音にかかわる事象の掛け算で決まります。
わかりやすく言うと、プレイヤーの性能×アンプの性能×箱(エンクロージャー)の性能×スピーカーユニットの性能となります。
例えばいくら良いスピーカーユニットを用意しても、エンクロージャーが無ければシャラシャラ音がするだけでその性能を100パーセント発揮することはできないということです。
ほかにも、リスニング環境、ヘッドユニット(音楽を再生するユニット)の性能、供給される電圧などにも左右されます。
その昔レコードで音楽を聴いていた時代では、「レコードの針」からすでに音質が決まっていたと言われていたほどです。今でいえば、再生するプレイヤーから音が決まってくるという事になります。
プレイヤーに読み込ませる音源の質も音に影響してきます。CDから直接再生させる音源と、MP3等に圧縮された音源では音質に差が出てきます。直接CDから読み込んだほうが心地の良い音を感じる事ができます。
音の良さは掛け算だということを頭の片隅に置いておいてください。
ちなみにすでに自作されている方で、もっと上の音環境が欲しい人は「スピーカーユニットを高価な物に交換するのが一番手っ取り早く良い音を手に入れる手段、次点でアンプを高価なものに交換する事」だとコイズミ無線の店員さんに教えてもらいました。
いい音とは何か
スピーカーを作るに当たって、目指すべき方向は「いい音」のスピーカーだと思います。
さて、「いい音」とはなんなのでしょうか?
低音がドンドン鳴って、高音がシャリシャリ聞こえるドンシャリ系?
それともヴォーカルがよく聞こえるようなカマボコ系?
原曲をそのまま再現したようなフラット系?
人それぞれ聞く音楽のジャンルも違いますし、音にもそれぞれ好みがあるはずです。
ロックやポップスしか聞かない方もいれば、クラシックしか聞かない人、ジャズしか聞かない人。みんなが思う「いい音」というのは人それぞれ違います。
自分のために作る目指すべき「いい音」のスピーカーは「あなたにとっていい音」のスピーカーにするべきです。
細かいことを言えば、体調や気分によっても「心地よく聞こえる音」というのは違ってきます。
私の例でいえば凄く疲れているとき、低音をドンドン効かせて振動のある音に包まれると心と体に心地よい癒し効果があります。逆に全然疲れてないときは低音がウザくて邪魔に聞こえるのです。
人によって音の好みが違うだけでなく、同じ人が聴く全く同じ音の環境でも状況によって「いい音」というのは変わってくるのです。
音を調整できるアンプやプレイヤーの機能を使えばその時の状況に合わせて音を変えることができますよ。
スピーカーの箱の種類
自作するにあたって、スピーカーの箱の種類を知っておきましょう。
一概に箱といっても様々な種類があり、それぞれ特性や作りやすさが違います。
平面バッフル
平面バッフルは、平面の板にスピーカーをはめ込む形です。一番簡単でなおかつ場所を取りません。
特徴としては、板の面積が広ければ広いほど低音までスムーズに再生され、面積が小さくなればなるほど低音が出なくなります。そのほか、面積が広くなると板が鳴りやすくなり、表面からの反響音が大きくなります。
背面に箱が無いので、音がラクラクと出てのびがあるのが特徴です。
メリット
作るのが楽。段ボールでも作れる!
デメリット
設置場所を選ぶ。板が小さすぎると低音がかき消されるため満足な音が出ない。
後方開放型
後方開放型は裏の板が無い箱型になります。
平面バッフルの板をそのままスピーカー後方に折り曲げたものと同じようになるので、設置する場所に平面積が無くても設置することができます。裏の板が無いため音による空気の跳ね返りが発生しないので平面バッフル同様のびがあるのが特徴です。奥行きを伸ばすと筒状になるので、筒を叩いた時のポンポン感のある音が出てしまいます。
メリット
箱型なので平面バッフルより設置場所を選ばない
デメリット
平面バッフルくらべて製作工程が増える。伸ばしすぎると筒状の音の感じがする。
密閉型
密閉型は「いかにもザ・スピーカー」といったスタンダードなスピーカーの形の1つです。密閉された箱にスピーカーがついています。
一見簡単な構造ですが、良い音で聞こうとすると意外と複雑な計算が必要となります。そのカギはスピーカーの中にある空気の容積=箱の大きさと、つけるスピーカーユニットの大きさです。
メリット
素材や箱の大きさ、スピーカーユニットの大きさなどいくらでもこだわる事が出来る。
デメリット
自分の最適解を探すのにキリがない。作成が平面バッフルに比べるとちょっと大変。
バスレフ型
バスレフ型は密閉型のエンクロージャーに穴を開け、ダクトを取り付けた形になります。
空き瓶の口に向かって息を吹きかけると「ボー」という低い音がでます。その仕組みを利用しボーという音を低音にプラスして低音を増やすのです。
私がオススメするのはこのバスレフ型です。密閉型に比べて音の性格を変えやすいからです。
「自分だけの音を作っている感」を手軽に味わえるのが良いです。
メリット
密閉型を作れるようであれば、作成が楽。ひとつのスピーカーユニットに対して色々なサイズや素材の箱が設計できる。
デメリット
穴を一つ余計に開ける手間と、ダクトを別に用意する必要がある。
ココまでのスピーカーの音の特徴を動画にしました。
マニア好みのエンクロージャー
ダブルバスレフ
バスレフ型から派生してダブルバスレフ型というのもあります。動作が複雑で設計が厄介だと教えてもらいました。初心者向きではありませんね。
ダブルバスレフはスピーカーが付いている部分が小容積、下段が大容積の2段階バスレフとなります。
バックロードホーン型
バックロードホーン型はスピーカーの後ろにホーンを付けたような形です。
とはいえ、今は上の図のようにホーンを折りたたんで箱の中でホーンを再現した形が主流なようです。
自作スピーカーにこだわる方の多くが、このバックロードホーン型に行きつきます。設計が非常に難しく、スピーカーユニットを選ぶのも難しいです。
とはいえ、一番自作のしごたえがあるのもバックロードホーンの魅力。プロが聞いてもギョッ!とするような凄い音を再現できます。
自作スピーカーに慣れてきたら作ってみたい1台ですね。
メリット
音のプロも唸るような凄くよい音を出すことができる。
デメリット
設計、作成、ユニット選び全てが困難。失敗(思った通りの音が出ない)が多い。
以上、6種類のエンクロージャーを紹介させていただきました。まずは、どの形のエンクロージャーを作るのかを決めましょう。
スピーカーに箱が必要な理由は「低音」にあります。エンクロージャーなしでスピーカーを鳴らすと、スピーカー前面から発する低音が、スピーカー後方からでる低音にそのままかき消されてしまいます。 箱に入れずにスピーカーを鳴らすと低音が聞こえづらいのはこれが原因です。箱に入れないでスピーカーを近くでよく聞くと箱に入れなくても低音はいい音で聞こえているんです。
エンクロージャーの役割は、スピーカーの前面から出る音と後方から出る音を遮断することにあります。
自作スピーカーで有名な長岡鉄男さんはこれをエアコンに例えていました。壁も何もないところでエアコンの冷房を起動させても、冷やす室内機と暖気を出す室外機が同じ空間にあるため冷やしながら温めるため室温は変わらないのです。室温を変えるには、室内機と室外機を壁で遮断する必要があります。スピーカーの低音もこれと同じ原理だと思うとわかりやすいですね!
ぶっちゃけ、段ボール紙に穴をあけてそこにスピーカーを入れるだけでもそこそこいい感じに鳴ってくれるんですよ。
他にも、多角形のスピーカーだったり円柱だったり、球状のエンクロージャーなんてのもあります。
樹種による違い
箱に使う素材によって音は変わります。それは樹種、材料の厚さでも若干の変化があります。
スピーカーは基本的には「どっしり、がっしり、しっかり」作るのがよいとされています。音によって発生する余計な振動をいかに封じ込めるかが一つのポイントになります。
詳しくは別記事にまとめておきますが、基本的には12㎜~15㎜厚のシナ合板かMDFを使っておけば間違いありません。
エンクロージャーの大きさによる違い
箱の大きさによっても音に変化があります。基本的には箱が大きくなればなるほど低音感は強くなります。逆に小さくなればなるほど高音に強くなります。
スピーカーの中には何もないわけではなく、「空気」があります。スピーカーを鳴らすと中の空気がバネの働きをし、内側の空気はスピーカーのコーンの背面を支えます。
箱が大きくなれば空気のバネの力はよわくなり平面バッフルに近い音になりますが、箱が小さくなると空気の反発がつよくなるためスピーカーのコーンは動きにくくなるのです。この空気のバネの力である箱の大きさは「ここが最適!」というのはありません。逆に言うと最適が違うため、自分に合わせた最適を探すことができるともいえますね。
スピーカーのWAY数とは
スピーカーのWAY数とは、アンプの出力数の事をいいます。
スピーカーが1つの箱に3つ付いていても、アンプの出力が2分割であれば2WAYとなります。
フルレンジ1発
フルレンジ1発ではWAY数はありません。1つのスピーカーで低音から高音までを担当する形になります。
初心者はフルレンジ1発でまず作成してみるのが良いかと思います。
2WAY・3WAY
フルレンジ1発では超低音から超高音までを再現するのは困難です。
なので、低い音の受け持ち、高い音の受け持ちを他のスピーカーユニットで再生してやろうというのがこの2ウェイ、3ウェイです。
低音を担当するウーファーを付けたり、高音を担当するツィーターを付けたりするのが一般的です。
スピーカーユニットについて
スピーカーユニットは音を決める最も大切なものです。サイズによって再生できる音の得意技が異なります。
また、素材によっても音が異なります。
スピーカーユニットの規格サイズと得意技
スピーカーユニットは基本的に大きくなればなるほど低い音が得意、小さくなればなるほど高い音が得意になります。逆に言えば小さいスピーカーで低い音を出すのは困難です。
直径25㎝以上が大口径、20~10㎝を中口径、8㎝以下を小口径とすると、大口径が低音再生に強く、中口径は中音再生に強い、小口径は高音に強いといえます。
1本で低音から高音まである程度受け持つことが出来るユニットがフルレンジと呼ばれるものです。初めてスピーカーを作られる方はフルレンジで作ってみる事をオススメします!一般的に7㎝~20㎝が普通です。
スピーカーユニットのコーン素材による音の違い
スピーカーユニットのコーン素材によって音が変わってきます。
私が秋葉原のコイズミ無線さんで体感させてもらった中でわかりやすかった例をいくつか紹介します。
紙コーンスピーカー:ボーカルが目立つ印象
木コーンスピーカー:ボーカルも楽器音もはっきり聞こえる
鉄コーンスピーカー:楽器の音の際限度が高い。ボーカルは紙に比べると奥まりがち
聞く人によっても受ける印象や特長がそれぞれ違うと思いますので、こだわる方は実際に聞いてから購入するのが良いかと思います。
アンプについて
最後はアンプです。
アンプはプレイヤーから出力された音の電力を増幅してスピーカーユニットに送る役割があります。
アンプなしでスピーカーユニットに接続しても、一応音は出ます。ですが、音を鳴らすための力が不足している為、まず満足な音はでません。
アンプによって音質も変わってきます。音を良くしたいと思ったらアンプかスピーカーを交換するのが手っ取り早いですが、アンプ45対スピーカーユニット55ぐらいの割合で音質の良さが変わってきます。
安いスピーカーでも、高いアンプを付ければ驚くほどに良い音を鳴らしますし、逆に高いスピーカーに安いアンプを繋げてもあまり良い音は出ません。
最初は安いアンプでも驚くほど良い音に聞こえるはずですが、慣れてくるとワンランク上のアンプが欲しくなってきますよ。
まとめ
作る前に押さえておきたい基礎知識を紹介させていただきました。
スピーカー自作といっても、スピーカーユニット自体を自作するのではなくこのサイトでは基本的には外側の箱とスピーカーユニット、アンプを組み立てることを言います。
音はかかわってくる様々な要因の掛け算で決まります。
いくら高いスピーカーユニットを使おうとも、箱であるエンクロージャーによっては十分な性能を発揮できません。
逆に言えば、スピーカーユニット、アンプ、箱がうまいことかみ合うだけで安価でもそこそこ良い音を作ることができるということです。
このサイトでは自作スピーカーに関する情報をすべて公開しております。ぜひ参考にあなただけの自作スピーカーをつくってみてはいかがでしょうか。
自分好みの音の追及はとても楽しいですよ!
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