2022/9/1に発刊された「森林列島再生論」
読んで、感じた事をまとめてみました。
木材や建築に関わる人すべてに読んでほしい1冊
どんどん衰退していく木材業界。
「なぜ、木材業界はこんなにショボくれてしまったのだろうか??」
この本には、その答えと解決策が盛り込まれています。
是非、買って読んでみてください!
業界人なら読んでいて腑に落ちるポイントがたくさんあるはずです。
書籍の内容
ウッドステーションの塩地会長、早稲田大学の高口教授、東京大学の酒井名誉教授、鹿児島大学の寺岡教授、日本政策投資銀行の松本参事役、森林連結経営の文月副社長による全7章構成。
面積の2/3が森林と言われている日本。
そんな「森林列島」を再生するための事業案が、建築、情報システム、金融、エネルギー、サプライチェーンと様々な角度から書かれています。
林業や木材、建築の業界がなぜこのような状態になってしまったのか。今の業界を取り巻く問題を知ることが解決策を探す一歩目といえるでしょう。
各章には問題を解決するための事業案があり、確かにこの通りに行けば日本の森林は救われるんじゃないかと思わせる内容になっています。
提示された解決策に、どれだけ賛同を得られるかがネックとなりそうだと感じました。
森林直販は正解の一つ
今まで、森未来さんや林業プロジェクトさんでお話しさせていただいた事があります。
木材の流通業の人間としてこの業界について説明するという内容です。
そこで私は毎回、「西粟倉村」や「加子母村」のような事例が正解の一つなのではないかとお話してきました。それがまさに森林直販だったわけです。
個々の儲けではなく「村」のために木を直販するということ。
ユカハリタイルは分かりやすくていい例ですね。村の資源であるヒノキを村で加工して消費者へ直販しています。
複数の流通業者がここに嚙んでくると、また「安く買って高く売る」が発生して利益、利幅の取り合いが発生してしまいます。
奥多摩の「TOKYO WOOD」も形は似ているけれど中身が違う感じに思えたのは複数の個の力が強い業者が連携しているからでしょうか。
森林直販は、森を守る正解の一つだと感じます。
大型パネルが軸
著者の一人であるウッドステーションの塩地会長が開発した大型パネルが本書では再生の軸になっています。
最初に読んだときは、「これは、大型パネルの宣伝本なのでは?」と思いましたが、2週目を読んだときに「逆に大型パネル以外での解決策が見つからないのでは?」と思い改めました。
大型パネルについては過去記事に書いておりますので是非読んでみて下さい。
大型パネルは、様々な問題を一気に解決できる可能性を秘めています。
木材流通の人はどうなるんだ!?
プレカットの登場によって、私たちのような市場問屋や木材の小売屋さんといった木材の流通の業者は、もはやメインプレイヤーではなくなっています。
この本の中では、山林→素材生産業者→製材業→プレカット→ビルダー・大工・工務店と木材流通のなかに我々は組み込まれてすらいません。
市場見学に来られた工務店さんに「こんな場所があるのか!?」なんて言われるぐらいの状態になっているので、それも仕方がないことなのでしょう。
多くの会社で跡継ぎもおらず今の代で終わる方がほとんどなのも事実。このままではかなり縮小していくことになるでしょうね。
「では、どうしていけばよいだろうか?」を必死に考える時が来ています。
森林列島再生論 感想
読み終わった感想です。
森林や木材に関わる人、全員に読んでほしい本
まず、森林や木材に関わる人全員に読んでほしいです。
冒頭にも書きましたが、業界がしょぼくれてしまった理由と国産材が使われなくなっていった理由が凄く丁寧にわかりやすく書かれています。
解決策では、われわれ流通の人間がそのままの形で適応していくことは難しいことを教えてくれています。
「このままではいけない!!!」と考えるきっかけの1冊になるはずです。
製材所も同じく、ただ既製品をバンバン挽いて流通させる時代は終わりをむかえるのでは?と感じると思います。
森林と金融をつなぐ の章は飛ばして最後でもいいかも
森林と金融をつなぐの章ですが、読みやすくイメージしやすい流れから一気に難しくなります。
さらっと一旦読み飛ばして、最後まで行ったら帰ってくるぐらいでよいかと感じました。
ただ、結構重要なことも書かれているので読み飛ばして終わりだともったいないです。
例えば、ここだけは外してはいけない「センターピン理論」。林業再生において、ここだけは外してはいけないポイントが立木の適正価格化であること。その解決策に「買い手市場から売り手市場へ」などです。
順に読んでいくと、この章でストップしてしまうかもしれません。無理そうなら、本を閉じず、いったん飛ばして最後にまた戻ってくることをオススメします。
いかに国産材事業者に
「大型パネル」が受け入れられるか
国産材事業者が大型パネル工場を運営する。
これが、いかに今の業界人に受け入れられるのか?がネックかと感じました。
大型パネル工場を運営するということは、受注の階層が1段階上がるということを意味します。下手したら2段階ぐらい上がるのかも。それまでプレカット工場や市場に出荷していた物が、工務店に向けたものへ変わるわけですから。
「売り物と売り先、売り方を変える」
きちんと出口(家として販売してくれる業者)があって、受け入れられる実績があれば自然に広がっていきそうです。
「製材所+プレカット+大型パネル」の生産ラインが一体化した工場が多くの地方に作られるようになる。地域で挽いた材が、ほかの地域に出荷されることなく循環される。都市部に行くときは「ほぼ家」として出荷することで木材以上の利益が上がる。
これが新しい木材流通のスタンダードモデルになれば自然と山林にお金が帰り、再造林からの循環資源へ。まさに森林列島が再生するわけです。
大型パネルは、書籍にあるように業界の様々な問題が解決できます。
要はその先の「人の心」が動かせるのかどうかです。「よし、やってみるか!」と各地でこの取り組みが広がっていけばいいですね。
明るい、日本の森が活きる未来がリアルに見える1冊
是非、買って読んでみて下さい!
特設ページでは、著者によるリレートークも見ることが出来ます。さらに深く理解できました。読む前の方も、読まれた方も、ぜひ見てみてくださいね!勉強になりますよ~
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