9/19に森未来さんで行われた「森の未来会議」でゲストスピーカーとしてお話しさせていただきました。
ゲストトークの内容
せっかくなので、その時にお話しさせていただいた内容を全て公開させていただきます。
今回のテーマは「市売問屋から見る木材業界の不都合な真実」です。
物騒なタイトルですが、出来るだけわかりやすくかみ砕いてお伝えしていきます。
最終的には今日来て、聞いていただいた方一人一人が何か考えて実際の行動に繋げていってもらえたらいいなと考えています。
内容はザックリこの4点
自己紹介と市場の説明
木材流通のおさらいと業界の変化
業界間で共有できない問題
そして「まとめ」です。
自己紹介
名前 土橋善裕(どばし よしひろ)
職場 東京木材市場内浜問屋「新木場相原」
個人事業 「あいはらの木」
職歴 30歳まで本屋の店長→材木問屋
そのきっかけは「何か新しい事がしたかった」+「親父」
1週間新木場を歩いて調査し新木場木材商工企業配置図を更新するかつて600件以上あった新木場の木材業者が100件を切るまでになっている事実を知りました。
東京木材市場の稼働買方が毎年2割ペースで減ることを知りました。
顧客である材木屋への商売は長くても数年で限界に来ると察し、「木を楽しむ」個人事業「あいはらの木」を始めました。
私のいる木材市場とは
わかり易く例えると、「豊洲の魚市場の木材バージョン」です。
それが木材市場です。
木材市場には1件の大きな問屋が経営する単式の市場と、市場という器の中に複数のテナント問屋(浜問屋)が間借りしている複式の市場があります。
東京木材市場は複式の市場です。
右の写真は競りの風景です。ご高齢の方が多いのがお分かりいただけるかとおもいます。
そう木材業界のメインプレイヤーは65歳を超えた人たち、しかも後継ぎもおらずこの代で終わる人がほとんどです。
私の自己紹介と、木材市場についてざっくり説明させていただきました。
木材業界の不都合な真実とは
そんな私がお話をさせて頂きます今回のテーマを、今一度みてみましょう。
今回のテーマは市売問屋からみる木材業界の不都合な真実となっています。
これはズバリ
時代と共に木材を取り巻く変化があるにもかかわらず、 川上・川中・川下で木材に対する意識が違う。
ざっくりいうと、
木材業界全体が すれ違い状態 という事です。
木材流通のおさらいと時代の変化
2019年現在の木材の流通はこのような流れになっています。
中には例外もあるかもしれませんが、ほぼこの通りだと思ってください。
わかりやすく絵にしました
分かりづらいので、絵で書いてきました。
国産材と輸入材の使われるながれをザックリ絵にしました。
材木問屋、市売問屋は製材所が仕入れ先で材木屋さんがお客さんになります。
次に時代の変化によって起こった木材業界の変化を見てみましょう。
時代の変化によって起こった業界の変化
まずは「大手ハウスメーカー」の登場です。
昔は、家を建てるなら信頼出来る地元の大工さん、工務店さんがメインでした。
「あそこの大工は腕がいいから」なんて口コミで家がたっていたのですね。
しかしながら、今は家を建てるとなったらまず向かうのがハウスメーカーのモデルハウスではないでしょうか。地元の大工さんにいきなり直接頼む人は昔と比べてかなり少なくなりました。
プレカットの登場
大工さんの手刻みから機械加工のプレカットに移り変わりました。
構造材の刻みはもう、ほぼプレカットでしょう。統計によると95パーセントはプレカットとのこと。
大工さんが刻むのはリフォームなどのプレカットでやらないような小ロットの刻みがメインだと材木屋さんが言ってました。
刻める大工が少なくなっているのを困っている人もいます。
和室がステータスで無くなった
昔は、葬儀の際に大勢の人を家に招く文化がありました。
そのため和室が必要だったわけです。ふすまを開ければ大きな部屋になるような和室ですね。
建具や柱は目に見えますから良い材料、いわゆる節の無い「役物」と呼ばれる材料(建具材)や、高価な床柱などが使われていました。
いまでは考えられないかもしれないですが、和室が一種のステータスだったんですね。高級な時計や高級外車のようなものです。
それがいまは、洋間がメインになっています。 仏壇でもない限り和室自体がそこまで必要ないような感じですね。
アパートを探すにしても和室を避けませんか?
真壁工法(柱が見える)から大壁工法(柱が壁紙に隠れる)に変化したことで、節の無いような良い木材を使う必要性が少なくなっているのです。
国産木材と輸入木材
昔は国産の無垢材を使うのが当たり前でした。
戦後の復興時から木材の輸入が始まり、今では柱といえばホワイトウッドの集成柱を使うのが当たり前になりました。
寸法安定性、見た目、強度、使いやすさなどホワイトウッドの方が上だったのですね。もちろん値段も。
身近な例でいえば、ホームセンターに行っても、木材といえば国産材よりSPFの方が目立つように置いてあるじゃないですか?
建材の登場と驚異的な進化
時代と共に進化し続ける建築材、いわゆる建材の登場ですね。
右の画像は東洋テックスさんのダイヤモンドフロアーで、 左の写真は榎戸材木店さんの事務所の山武杉の無垢の床材です。
見た目だけでいったら素人の人は本当の木かどうかもうわからないと思います。 建材の進化はとまらないですね。
ぶっちゃけ、今だったら新建材だけで家たてられちゃいますからね。
木材市場はこんな感じ
私のいる木材市場の様子です。
昔は材が売れて売れて仕方なかったとの事でした。
競りのあとの積み込みは夜遅くまで行われ「今日は1000万売ったよ」などという会話が普通に繰り広げられたそうです。
荷物さえ集めれば何でも飛ぶように売れた。家が建ちまくってた時代。 いわゆるバブルというやつです。
右の写真は今の木材市場、これは直近9月の「東京木材市場3大記念市」のひとつ「東京木材問屋組合開設57周年記念市」の様子です。 人が1人でも多く写るよう、にあえて広角で撮ったのですが、逆にみすぼらしくなってしまいました。
ざっくり文字でまとめました
業界の変化をザックリまとめました。
特に、我々のお客様である都内の材木屋さんはほぼ不動産業という感じになってます。
私たちが年を取るということは、取引先も仕入れ先もみんな一緒に歳をとっているんです。
そうやってその代かぎりのお客さんがどんどんいなくなります。 もちろん時代の変化によって起こった業界の変化はもっといっぱいありますが、今回は私の身の回りの事例だけ説明させていただきました。
川下目線でもう一度見てみよう
先ほどのスライドですが、今一度お客様から見てみましょう。
今の時代は多くの割合で①の大手ハウスメーカーの住宅展示場に家を見に行くと思います。
②のおしゃれな設計をしてくれる建築士さんのつくる家も人気になってきているようです。
昔は、大手のハウスメーカーがなく、「あそこの大工は腕が良くて」なんて近所の口コミで地場の大工さんの所で建てられる③が普通でした。
その③の普通が普通で無くなったにもかかわらず、市場も市場を取り巻く環境も木材に対する意識が変わらないのです。
業界間で共有できない問題
ついに折り返しました。 起承転結の転の部分。
三つ目は業界間で共有できない問題です。
今一度、木材の流通を見てみます。 色でそれぞれ製造、加工、需要、最終消費者と分かれています。
この一軒一軒がそれぞれ問題を抱えています。 ざっくり見ていきましょう。
色別にわけるとこんな感じ。
私が市場にいて問題だと感じる事と、取引先から直接聞いた話ばかりなので、基本的には1次情報と2次情報になります。
ココに書いてある以外にもいっぱい問題はあると思います。ここではざっくり色々な問題があるんだなということだけ頭に入れておいてください。※私の身の回りで起きている事なので、これに当てはまらない人(困っていない人)もいます。
川上から順を追ってみてみよう
川上の木を育てて伐採する人たち
まず、木を育てる人。林業家さんたちですね。
基本的には良い原木を育てるのが目標だと思います。
最近では、地域材ブランドとして推したいという面も見られます。 間伐や下刈りを始め、節が出ないようにきちんと枝打ちなどの手入れをします。
良い材、すなわちできるだけ原木の価値が高い役物のような希少価値の高くなるような材がとれる木を育てたいと考えるはずです。
原木を製材する人
次に製材をする人です。
製材をする人は出来るだけ安く原木を買い、材積と単価のはる構造材や粗利率の高い役物を挽いて売りたいわけです。
まぁ、安く買って高く売る商売の基本ですね。
これは、先日東京木材市場にて行われた、岡山県の真庭材展示即売会の際に感じたことなのですが、 山の方の人は、「色物」と呼ばれる「役物」をなんとか木の大消費地東京で売っていきたいと考えているようです。
集まった材料は、それはそれは目の保養にはちょうどいい、節もなく目も通った綺麗な材料が多かったです。
それが市場で飛ぶように売れたかって?結果から言えば思ったより全然思った値段では売れないですよね。かなりの量をまた大型トラックに積んで持ってかえられました。
ちなみに、展示即売会は東京木材市場のお客さんである材木屋さんに自身のお客さん、いわゆる大工工務店さんを市場に連れてきて材料を見て買ってもらうというものです。
今現在それが必要な仕事があれば安く仕入れるいい機会なんでしょうけど、大工さんは在庫持たないですからね。無理もないです。
東京木材市場などの一次問屋
次に一時問屋ですね。 この辺から一気に雰囲気が変わってきますよ。
まず、現状の東京木材市場では構造材はほとんど売れません。理由はプレカットがあるからです。
売れても増改築のために数本がパラパラと出ていくぐらいです。
同じように役物も売れません。在庫してあってもその置き場は売れなさ過ぎて景色になっています。 理由は、そういったものを使う仕事をもっているお客さんがいないからです。
ちなみ、一番売れるのはバタ角と呼ばれる土木材です。
金額的にも材積的にも圧倒的。 理由は都内は一戸建てよりもビルが立つからです。
言っちゃなんですが、バタに食わせてもらってるといっても過言ではないです。
バタ角を馬鹿にするような材木屋さんもいますが、一番流通しているのはバタ角、一番お金を動かしているのもバタ角。
これは紛れもない事実。
もう一つ、木材市場の主力商品は「既製品」の一等材とよばれるもの。
木材業界にいないとわかりづらいと思うのですが、一等材とは俗にゆう節のある「並材」というものです。
既製品というのは、日本に昔からある「尺貫法」を用いた寸法の材料をいいます。
今や木材市場は、足らずまいを間に合わせるための材木屋さんにとっての荷物置き場になっているといっても過言ではありません。
たまに、東京木材市場に林業に関わる学校の生徒が見学に来られる事があります。市場の中の説明をさせていただく機会が多くなったのです。
その際、「木の大消費地東京唯一の木材市場で、今一番売れている物はバタ角です。役物はめったに売れません」と言うのが非常に心苦しいです。だって、これから林業に関わるのであれば、良い材育てて流通させたいと思う訳じゃないですか。そこを全否定するような感じにとられてしまうからですね。
でも、これは今現状の紛れもない事実なので伝えないよりは伝えたほうがいいでしょ?
二次問屋 いわゆる材木屋
続いて私たちのお客さんである二次問屋さん、いわゆる材木屋さんです。
都内ではかなり多くの材木屋さんが不動産による収益があります。 昔から木材を置くために広い土地を持っていたため、そこにマンションを建てている例が一番多いです。
そのため、基本的に木材の置き場があまりありません。 お客さんに言われたときに言われたものをトラックで運ぶ御用聞きのようなものです。
材木に関してはお客さんから指定が無い限り、ブランドよりも価格で選ばれることがおおいです。 というか、木材よりは建材がメインになっていると市場のお客さんから聞きます。
役物は、もし言われたら言われた時に言われた量だけどこかで手配するような感じ。もちろん産地指定をされることはほとんどありません。
お客さんが木の事をそもそも良く知らない&いわれたものを素直に用意してもっていくしかない。そもそも下請けなので、提案もできない。
驚いたのは「新規客はいらない」という点。
ビジネスをしている以上、BtoBとはいえどこかで新しい顧客をみつけなければ売り上げは縮小していくのはわかっていながら、新規客はいらないというのです。
その理由は「ひっかかり」という取引先の倒産による売掛金の回収ができない事を恐れているから。
新規で取引をする場合は、手形では無く基本的に現金で、なおかつ信頼できる人の紹介でないとしないとのこと。
木材は単価が高いため、引っかかると連鎖的に倒産するのも珍しくありません。下手したら数千万単位で回収できなくなるわけですからね。
ひっかかってそのとき倒産しなかったとしても、それまでの売り先を失う事になる為、それまであった定期的な売り上げはなくなります。
もう、木材の付加価値がどうこうとか関係ないような感じになって来てますね。
建てる人 大工・工務店
次に大工・工務店さんです。
基本的に刻みはやりません。現場に刻む工具すら持ってこないなんて例も珍しくないようです。
プレカットで届いた材料を使いプラモデルを組み立てるように立てていきます。
もし寸法違いのプラカット材が来たらどうするか? 「刻みなおして新しいのをもってこい」 と言われるとのこと。 何かあったときの責任を負いたくないわけです。 もし何かケチをつけられた時のリスクが大きすぎます。
「良い材を使う」というよりも いかにクレームを出さないかに注力しているのが見て伺えます。
私の地元にあるファイブイズホームというハウスメーカーさんは「クレームを出さない事が一番の顧客満足」として「無垢材」は一切使わないということでした。確かにそういう考え方もあるんだなと思いましたね。
材木屋さんと同じく、驚くことが一つあって 自社集客はあまりしたくないという点です。
大手のハウスメーカーさんで建てる家、実は地元の工務店の人が下請けで建ててるんです。 工務店の人も在庫のリスクなく、クレームもハウスメーカーが背負ってくれる。面倒くさいローン関係、保障関係も全部やってくれる。なにより自分たちでできない「集客」をやってくれるため、都合が良いようです。
これが、ファイブイズホームさんの本です。色々な視点で「顧客満足」があるんだなと勉強になりますよ。
設計する人 建築士
工務店さんと二人三脚なのが「建築士」さんですね。
有名な建築士の飯塚豊さんが2017年に書いた「新米建築士の教科書」という本に「建築士の資格は持っていても、学校では木についてそんなに多く学ぶ機会はない」と書いてありました。 そもそも木について良く知らないのです。
市場にいると、材木屋さんから下の人たちは、製材所が挽いている既製品の寸法すら知らない人が多いように感じます。その理由は注文してくる材料の寸法の中途半端さ。 例えば50角の注文とかですね。完全に設計ベースでの寸法です。
日本には昔から45㎜角(いんごかく)60㎜角(にすんかく)という既製寸法があるのです。 これをそのまま使えば安く済むのにもかかわらず 50角をとるには加工機の刃の位置をかえるか60角を落とす必要がでてきます。
すると、材料代+加工代で材料が高くなってしまうのは必須。 それで材料代が高いっていわれても「しらないよ、いってきたのはそっちでしょ」ってなっちゃう。
あともう一点が、工務店の裁量で使えない材があることです。
知り合いの設計士さんは、山の事を勉強し、その地域の材を使いたかったけれど、お付き合いのある工務店さんにその材料の流通ルートが無かったため他の材を提案されたそうです。
木にこだわる建築士さんがいくら頑張ってもこの流通の見えない壁によって道が閉ざされている例もあったりします。 川上のひとはそんなこと知りもしないはず。
一番の川下 住まい手さん
最終的な木の消費者である住まい手さんです。
昔のように人を家に招かなくなりました。冠婚葬祭というかお葬式の時とか、広い床の間に仏様を寝かせて人を招く文化が昔はありましたよね。 人を呼ばなくなったことで和室がステータスで亡くなったのです。
当然、高級な見える木も必要なし。 というか、住まい手さんは木じゃないんです。
クレームというか文句がなくて、間取りがよくて、キッチンが良くて、お風呂が良くて、トイレと玄関がよければ大体満足。
家を選ぶ基準はだいたいこんなもんです。 なので、家を建てようと思ったらハウスメーカーの展示場に行くと思います。地場の工務店に直接頼みに行く人なんてかなり少ないのでないですかね。
今一度、川上を見てみよう
さて、今一度、木を育てる人をみてみましょう。
これまで見てきて山側と使う側の意識の違いが見えてきましたか?
山側は少しでも良い材を育てたい、付加価値をつけて高く流通させたい。
野菜と違い、何十年もかけて手入れしていくものだからこそ余計にそういったほうに向かうのでしょう。
しかし、一番の川下にいけばいくほど、特にそういったものを必要としていないというのがお分かりいただけたかと思います。
つまり、まとめるとこうです。
お互いの先のお客さんの事を知らないため、業界間でほしいもの、うれるものの情報共有ができていない。 需要と供給のバランスがとれていないのです。
ちなみに木材市場はこんな感じ
ちなみに私のいる木材市場ではいつもこの話題になります。
みてわかりますかね。鶏と卵 そう、卵が先か鶏が先か問題というやつです。
問屋は「市場が市に客を連れてこないから売り上げが上がらない」
市場は「問屋が珍しいものを仕入れないから市場に客が来ない」
でも、違うんですね。 市場のお客さん、買い方さんはどんどん減ってますし、忙しくしている人は市なんか来ている暇はないですから。 そもそも市場に来なくなってるんですよ。
問屋がいくら珍しいものを仕入れたって、お客さんがくるわけじゃないんです。そんなものいつ売れるかわらからないですし、ただの在庫リスクってだけ。
逆に材料を必要としない買わない客が来ても売れませんって。
そうじゃないんです。
もっと根本的な問題を把握して 解決するための案を出して 実行してみて その結果を分析して改善したりしていけばいいんです
でもまぁ・・・・
わたしはあきらめました。 もう、私ごときが何を言っても他人は変えられないんです。
もうね、できない理由ばかりが100も200も帰ってきて、それが伝染して自分からもできない理由しか出てこなくなってしまうんですね。 それがめちゃめちゃ嫌で。
市場にいるのって行動をめちゃくちゃ縛られる「枷」みたいなものに感じるようになりました。
そこで私は、自分の強みを活かして 木を楽しむ個人事業あいはらの木を始めました。
ここで地味に外貨を稼いでいるんです。 ここでいう外貨とは本来の木材販売でないところからの収益の事です。
例えばカホンやクッブだったり木のポータルサイトからの広告収入だったりですね。こっそり化粧品のアフィリエイトなんかもやってたりします。
すさんだ心とお財布をだいぶ救ってくれています。
話はちょっとそれましたが次が最後のまとめです。
まとめ
「市売問屋からみる木材業界の不都合な真実」が今回のテーマでした。
その正体は
時代と共に木材を取り巻く変化があるにもかかわらず、川上、川中、川下で木材に対する意識が違う事なのです。
問屋にいて感じることは、仕入れ先の製材業と小売業の時点で、すでに「すれ違い状態」なのです。
業界のすれ違いが無い理想例
私が思う、意識のすれ違いが無い理想例を3点紹介します。
とはいえ、それぞれの利益率や仲良くなってるかどうかなんて内情はよくしらないので、あくまでも私が外から見て思う理想例になります。
1点目が浅野さんも関わっているTOKYO WOODです。
林業家から工務店までが一気通貫でつながっている為、「東京の木で家を建てたい人」に選ばれる仕組みづくりがきちんとできています。 多摩産材の理想的な商流の仕方だと思います。
2点目は岐阜県にある加子母村の中島工務店さんの家です。
加子母で育った東濃ヒノキが加子母で加工され、加子母の職人さんが建てる家。いわゆるすべてが加子母で完結する「完結型林業」の理想形だと私は思います。地域創生に興味がある人にとってはこの取り組みはキーになるんじゃないでしょうか。 住まい手さんに「加子母」のファンになってもらうよう様々な取り組みをおこなっています。
3点目が西粟倉村の森の学校ですね。
加子母村と同じく、伐採から販売まですべてが西粟倉村で完結しています。 つまり「材の商流をほぼ、村で全て握っている」ということです。 切った木の行き先が原木の市場ではなく、立っている状態から、販売までを村全体で回していく。加子母村と同じです。そして、そこに雇用が産まれる。 そこでの「木」は資源の一つであり、大切なのは、「村」という考えですね。
紹介させてもらったこの3つには先ほどから説明させてもらった、川上から川下までのすれ違いが存在しません。 ある意味理想例だといえます。
とはいえ、普通の材木問屋や材木屋さんや工務店さんにこれをもとに真似をしろといっても今までの流れやしがらみが強すぎて動くことができない、もしくは進んで動くのは嫌なはずです。
でも、ビジネスとは人の困ったを解決するもの
そもそも、ビジネスとは 「困った」「どうしても欲しい」を解決するものです。
木材業界は過去の成功体験もあり、未だに特に困っていない事、必要でない事に価値を見出していると感じます。
欲しくない物は要らないでしょ? 結局、お客さんが欲しがらない物は工務店さんも欲しがらないし、材木屋さんも欲しがらないし、材木問屋も欲しがらないんです。
「困った、欲しい」を解決することを考えていきましょう。 最終顧客に「欲しい!」を想像させるものが必要なんです。
誰が、誰の困った、欲しいを解決するのか 木材業界にかかわるそれぞれの立ち位置の一人一人が、自分たちの持つ機械などのハード資源、知識などのソフト資源を活かしてどう解決していくのかを考えることが必要だと私は考えています。
ズレたPR
よく、「日本の山を元気に!」とか「地球を守るために日本の木を使おう!」とか「地域の為に地産地消」「CO2削減の為に」みたいなPRを見かけます。
特に、川上の方で多くみられますね。 このPR、私から見るとめちゃくちゃずれてるように感じるんですよね。
日本の山が元気になるのはあくまでも木が使われた「結果」ですから。
自分が消費者の立場にたったら日本の山の為という理由で木をつかいたくならないでしょ?
じゃあ、あんたはこれからどうするんだい?
私はどうするのか? 残念ですが、木材市場の中では現状維持と衰退しかできないです。
理由は顧客である材木屋が減る一方で増えないからです。既存の木材流通業は衰退産業。まさに「打つ手なし!」
なので、儲かる分野で外貨を稼ぎながら道を探る予定です。
外貨だけでもそこそこ稼げているので木材辞めてそこに時間とお金のリソースを全て割いてしまえばいいのでは?ともおもうのですが、せっかく縁あってこの歳でたどり着いた材木業界。しかもかなりレアな立ち位置の川中。
凝り固まった現状をなんとか少しでも良い方向に向けていけたらと出来る限り自分にできる活動を続けていきます。
私の理想の材木問屋2.0
最後に私の思う、理想の材木問屋2.0です。
材木問屋にいる荷主(製材所)と材木屋と繋がれることを強みに、設計士さん、材木屋さん、大工工務店さんをマッチングさせる「木」に特化した何か。例えば材料だけでなく、既存の流通ルートから一歩飛び出すような、人と人をマッチングさせることで「業界間の意識違い」いわゆる境目をなくしていく事がポイントかなと考えています。
たとえば、先ほども紹介させていただいた「新米建築士の教科書」の飯塚豊さんは「もしあなたが建築士として食べていきたいのであれば、木にこだわりを持つことが必要」と書いています。
ちなみにこの本です。
木に詳しくない建築士さんに、木の知識をきちんと伝えること、仕入れ先のルートをつなぐこと。
結局、最終消費者に木の魅力を伝える事ができるのは、最終消費者と直接繋がりのある人なのです。 なぜなら、使用用途や良さを素材ではなく、実際の建築物として肌感覚というか5感でつたえることができるから。
我々流通業は川下の人に素材の良さをPRすることしかできません。
最終消費者に木の必要性と魅力を感じてもらう為に「木の知識」を伝え、「流通ルート」をつくる。
それが、私の理想の材木問屋2.0です。
そのための取り組みの一つが、このブログと下の木材のポータルサイトです。
木に魅力を感じる、必要性や良さを伝えられる。建築士集団のキノイエセブンみたいな「木の家をたててください」と言われる建築士さんが増えてくれればいいなと考えています。
今日来てくださった皆さま、聞いてくださった方は何かしらで森や建築、木に関わられている方だと思います。 それぞれの立ち位置できっと、業界間で需要と供給の意識のすれ違いが存在しているはず。
それを解決できる何かを考えてみてほしいです。
以上が、当日お話しさせていただいた内容になります。
メインはその後
その後、質問コーナーも盛り上がりました。
中には「材木問屋」と「材木屋」って要りますか?なんてきわどい質問もあったりしました。
結局終わった時間が21:00を過ぎてました。
その後、懇親会で乾杯!
みんなとの森の未来を語り合いがあまりに楽しすぎて、帰りが終電になっちゃいました!
森の未来会議は毎月第3木曜日に開催中!
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