東京木材市場内浜問屋 新木場相原のブログです

木材流通のブラックボックスと木材業界について

林業をしている人から木の家を建てる人まで、木材業界の川上から川下までセミナーしたり、懇親会をしたりで繋がりを作ろうとしたり。モクコレなんかのイベントも含め普及、啓発、販売と色々と頑張って活動をされている方が私の周りにはたくさんいます。

しかしながら、実際に上手くいっている事例はごくわずか、なおかつ何処でも誰でも真似をできるものではなかったりします。例えば、西粟倉とか、加子母村です。「村の為」とかそういう「何か」が無い限り、会社単位、個人単位では利益追求が付いて回ります。

頑張っている人や団体がこんなにもいて、精力的に活動をしているにも関わらず、何故うまく回っていかないのか?

なぜこの業界はここまで落ちてしまったのか、その理由がつかめてきたので、一旦まとめてみることにします。

私がたどり着いた原因は、「木材流通におけるブラックボックス」です。

 

木材流通のブラックボックス

この業界がこのような状態になったのは「木材流通のブラックボックス」が多すぎる事が原因だと私は考えました。

ここでいう木材流通のブラックボックスとは、各流通経路に存在する「商売」のこと表します。

絵にするとこんな感じです。

木材の流通経路は複雑で長く、最終的なお客様に届くまでに沢山の「商売」を通っていきます。

この業界の「商売」はとても単純で「安く買って高く売る」で利益を取っていくわけです。

1円でも安く仕入れて、1円でも高く売る。商売の鉄則ですね。

その鉄則が木材業界全体が上手くいってない原因だと考えました。

上手くいっている状態とは

私が思う「業界全体が上手くいっている状態」とは、川上から川下まで不満も無く潤っている状態です。

山林所有者など山側の人には、利益と再造林をするための費用がでる状態。製材所、問屋、材木屋は値段を叩かれない状態。工務店も木の価値を提供した家を適正価格で建ててもらう。

そんな川上から川下まで、誰も不幸にならない状態です。

 

ブラックボックスの具体例

ブラックボックスの具体例として、「MOKUWALL」があげられます。

株式会社PALACEさん(旧 ムサシパーティション工業)さんと東京木材市場が共同開発した、天然木(杉)を使ったパーティション(間仕切り)です。いまでは、VENT(木表装パーティション)と名前を変更したようです。

都会のオフィスの中でも木のぬくもりを感じる事ができるパーティションで、内装制限などの法律にも引っかからず気軽に設置ができるのがポイントです。

私は、コレが世の中に売れまくれば役物とよばれる無節の材料が使われるようになって木材業界は潤っていくはずだと思ったんですね。しかしながら木材ジャーナリストの赤堀楠雄さんに「これがでまわっても森には還元されないよね」と言われたことがあり、それがずっと引っかかっていました。

確かに、冷静に考えるとこれが売れて儲かるのは、施工するPALACEさん、中に入っている材木屋、材木問屋、材料を挽いてくれる製材所までです。製材所が原木を高く買わないと、山側にまで還元できないのです。

そして、この素材を探すのにも予算の関係上、1円でも安く良い物を探すというところからスタートしている為、製材所に対して値段を叩くようなところから始めているような形になります。この時点で、木材の持つ価値を一番低い値段で流通させているわけです。

 

どの流通過程で、誰がどれだけ利益をとっているのか、それは本人以外誰にも分りません。

あるのはお客様の所に出る最終的な製品価格だけです。

 

山に再造林する為には、リューベ10000円の原木が20000円にならないと再造林の経費を出すことができません。一戸建ての家で例えるなら、お施主さんに日本の森林の為に+50万円多く負担してもらうようなイメージだと、先日のJAS構造材普及啓発インターンシップセミナーで教わりました。

ブラックボックスは解決できない

先ほど、「お施主さんに+50万円多く負担してもらう」と書きましたが、この50万円が直接山主さんに行けば問題ないんです。ですが、たとえ多くもらえたとしてもおそらくはブラックボックスの過程でどこかの会社の利益になってしまうのでしょう。

1円でも安く仕入れて、1円でも高く売る。商売の原則が流通経路の全てに存在する限り、最終的にしわ寄せがいくのは山側、つまり川上の方です。もちろん川中でもより良い物をより安く仕入れる必要が出てきます。これで山側にまで利益が回っていきますかね?無理でしょう。みんなカツカツでやってるはずです。

補助金が無いと、山林整備が出来ない状態になっているのが良い証拠です。価値が認められた価格で流通していれば補助金なんかなくても利益は出るし、再造林もできるはずです。

私が思うに、木材流通におけるブラックボックスだらけの状態はもはや解決できません。

流通業の真ん中にいる限り、価格は叩かれつづけますし、叩き続けるしかない現状から抜け出せるイメージができません。もはや新たな道を探るしかこの衰退した状況を変える手はない状態だと思います。

 

解決案 川上川下見える1本化

このままだと記事的にも投げっぱなしになるので

出来る出来ないは置いておいて、私が思いついた解決案をひとつ。

川上から川下まで全て1本で繋げた上でブラックボックスを全て見える化するのです。

そもそも1本に繋げるのが難しいですが…

現状は、川上と川下(山から工務店まで)を1本に繋げて活動している団体があるとしても、綺麗につながっているように見えて「誰が多く利益を取っている」という不満は絶対的に出てきます。会社単位でやっていることが違うのですから、かかる経費も違ってきますしね。もしかすると、一見うまくいっているところもこういった不満を抱えている会社もあるかと思います。

誰がどの時点でどのぐらいの経費が必要なのか?なぜこの値段になるのかをきちんと全部見える化して1本の線を不満の出ない状態にするのです。その仕組みに賛同してくれる業者を川上川下すべて日本全国の木材関係の業者で繋いでいきます。

そして木の家を建てたいお施主さんに山の再造林のため最終的な金額から+50万円を負担してもらう。その50万円はそのまま山主のところに行くようにする。そうすることで林業が林業として成り立つようになると思います。(現状のブラックボックスが連なっている木材流通では、原木の価格を+10000円するなんてことは現実的に見てほぼ不可能だと思います)

きちんとした価値のあるものを、きちんとした値段で流通させる。そして再造林にまでつなげていく。木を切ることが、木材業界で商売をすることがマイナスにならない仕組みを作れればいいですね。

 

業界が1本に繋がらない理由は、こちらの記事をどうぞ!

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