業界の立ち位置によって解決が難しい問題を、また一つ発見しました。1枚板の問合せを受けた事のある方ならなんとなくわかるかと思います。
今回、発見したのは材の問い合わせがあったのに「パッっと見積もりが返せない」ことから発生しました。
木材業界の特徴の一つ「誰がどこまで責任を持つのか問題」
今回発見したのは、「誰がどこまで責任が持つのか問題」です。
先日、広葉樹の長い無垢の板を探していると問い合わせがありました。
素材のみを探せばいいと思い、各所へ問い合わせをして結果的に材料自体は見つかったのですが、先方は「図面どおり加工までした状態」での納品を希望だったのです。
と、いうか大体今はそんなのが多いのでしょうか?加工済みの製品を現場に納めて「現場合わせで取り付けるだけ状態」というのがスタンダードなのかもしれません。
私は、工務店さんの繋がりの大工さんや加工屋さんが材料を加工するものだと思ってました。
結果的には、今の私の立ち位置では責任が持てず、リスクもとれないため「加工を含めた見積もりを出すのは非常に難しい」という結論に至り、「素材のみの見積もり」を出す事になりました。
ここに、木材業界の特徴の一つ「誰がどこまで責任を持つのか問題」というものが発生するのです。
「先方が欲しいもの」と「こちらが用意できる物」が違う事とリスクの問題
先方は、「加工まで終わって現場に納めるだけの状態」での見積もりを希望していました。それに対して、私の立ち位置で出来るのは「素材を探す事」です。
つまり先方が欲しいものと用意できる物が違うんですね。そこにはリスクの問題がはらんできます。
今回の依頼は長い無垢の板を何枚かはぎ合わせて広く長い板をカウンター材にまで加工した物の見積もりが欲しいという事でした。
無垢材の最大の特徴は「一枚一枚それぞれ違う」事。
もし、加工までの状態で見積もって、それが決まったとして、現場に納めた後にお施主さんから「この材は気に食わないからやっぱりナシで」「代わりの物探して」なんて言われたらもうアウトです。
現場に合わせて加工までしてしまったら後戻りできませんし、代わりに売りなおすことも出来ません。
はぎ合わせる材料の枚数で見積もりの金額も変わりますし、簡単に「いくらですよ」と見積もりを出すことができないのです。
これが、無垢材では無くエンジニアードウッドのような積層材での見積もりであれば、加工込みであっても価格と品質が一定な為に限りなくリスクが低くなるのですが、積層材はNGとの事でしたので。
先方が欲しい状態での見積もりと、こちらから提示できる見積もりが違うのです。パッっと見積もりが出せない理由は無垢材指定&加工というリスクでした。
向こうは、「はい、これはいくら。納期はいつ」という金額が欲しかったのでしょうが、こちらとしてはそうはいかないのです。
結果、最低限リスクのない回答になる
結局、素材のみの見積もりというところに落ち着きます。
それにも、リスク回避の為に「建築会社の方」と「お施主さん」両方に立ち合いのもと、材料を実際に見てもらったうえで納得いただき販売する。という条件を付けざるを得ませんでした。
幅はぎする関係で、個体によって使える寸法が違うため選んでもらった材によって購入が2枚になるのか3枚になるのかが変わるので、1枚単価ではなくリューベ単価(材積での単価)提示です。
見てもらって、買ってもらう。リスクを考えると加工までは出来ません。という所までが限界という事です。
こういうのは、銘木屋さんに任せた方が間違いなさそう
一応、先方にはこちらからの価格を提示したうえで数件の銘木屋さんを紹介させていただきました。
「餅は餅屋」という言葉があるように、どちらかというと銘木というカテゴリーに入ると考えたからです。高い技術を持った専門の加工業者とのつながりもあると思います。
もしかすると、提示された条件「現場に納めるだけ状態で納品」の見積もりがすぐに出せるかもしれません。
銘木の値付けは詳しくない為に、見積もりの値段がどうなるかわかりません。
どうしても欲しいのであれば予算から多少出ても決まるのではないでしょうかね。
木の性質、加工の難しさなど昔より知識が希薄になってきましたからね。
最近桧8寸の無垢柱を背割れ無しでほしいと依頼がありましたが断りました。
背割れ付でも8回挽きした上で埋め木するなんて今の監督さんじゃ知らない人も多いのではないでしょうか。
無垢材を使う事が少なくなってきた昨今では、リスクや木がどうなってくるのかなど木の性質をしっかりと広めていくことも建築業界には必要な事ですよね
コメントありがとうございます!
お施主さんは仕方がないことかもしれませんが、せめて施工する業者の方までは木の性質を理解していてほしいな~と思うのですけれど。
聞いただけで用意するのが難しい&すごい値段になる ぐらいは分かりそうなものですが、それすらもよくわからなさそうな感じの印象でした。
桧の見積もりも大変でしたね。
あまりに難しい案件は断るのも仕方がないような気がします。